December 2023

ゴルトベルクの響きが止んで蝋燭から立ち昇る永い煙を仰ぐ
蛤の二片をそっと合わせれば離れた半身をひしと懐く
叢に沈めた重い角を持ち上げて牡鹿はふたたび夜を歩く
波を立てずに湯船を去る白髪の老女の背中はうつくしい
なぜそこが帰る場所なのだろうどこも似た森の一角を恋う