240206 子竜

昼、澄んだ空に向かって聳える雪山の麓にいる。
たえまなく踊る風には山頂との距離はないのだと思う。
その風の一部のように、眼の前に一頭の子どもの竜がいた。
まだ蛇ほどの大きさしかないけれど、なめらかな青緑色の鱗に覆われた細長い体を縄のようにくねらせて、宙に浮いている。
「山との間に子を産んでしまった。それもそうだ」
と思う。
私たちは愛し合い、私たちの愛するこの子は竜なのだ。