230402 白い人

薄曇りの昼、都市のビルの一室で働いている。
大勢の人々が辺りを行き交い忙しない様子だった。
私も何かを急いでいたような気がする。

ふと窓の外を見ると、一瞬大きな白い影が視界を遮り、我を忘れる。
傍にいた男性はそのことに気づかず、何か別の仕事のために私を部屋から連れ出そうとする。
「急がないと」
「たしかに、急がないと……あの人が来たんだもの。あの人、あの白い人……」
窓の外には灰色の街を背景に舞い上がる人間ほどの大きさの真珠白のモルフォ蝶がいた。
蝶はビルの屋上に降りたようで、居ても立ってもいられない思いに駆られる。