桜三篇

夜桜

ごうごうと
煮えたぎる
春の弁天池

よざくらは
笑い止まぬ
麗しきひと

嗤い嗤われ
わが恋は
死ぬ

春来

鴬色と
さくら色
美しいのは
どちら

交ざり合うて
御茶ノ水
川辺に迷う
純情の子ら

波紋

風止んで
水面をうつ
何の気配も
ありはせぬ

おそらくは
見えぬ魚が
ひるがえしたのだ
銀の背を

春を過ぎては
どこへもゆけぬ
午后の沼