230722 彼らを魚に

昼、透きとおった建物の中に大勢の人がいて、何かの催しをしている。
奥の暗い部屋——夜だったのかもしれない——で他のことに気を取られている間に、隣の明るい部屋では嵐が過ぎたらしい。
部屋は入り口の一角を除いて、はてしなく続く眩い海辺だった。
波打ち際に知らない男性が一人倒れている。
雷に打たれたのだ。
彼の体は半ば波に沈み、少し離れたところから心配そうに彼を見つめる人々の足元も、寄せる波に浸かっている。
幸いにも彼は生きていた。
長い黒髪は先端が焦げていたので、近くにいた人が毛先をハサミで切ると、全体が少し短くなり、蘇るように美しく波打つ。
生きてはいたけれど、なぜか彼は魚になる必要があるらしかった。
ふと、彼の妻はどうなるのだろうと思い、集まっている人々の中に目をやると、幼児を抱いた女性がいて、目が合うとうなずき、夫と共に自分も魚になる、と言っているような気がした。

私は一匹の物知りの魚に連れられて、「魚の神様」に彼らを魚にしてもらえるよう頼みに行く。
明るい波間を小さな魚になって泳いでいくのは、とても心地よかった。
沖合の水面に可愛らしい「魚の神様」が銀青色の顔を出していて、一語一語丁寧に、
「彼らを魚にしてください」
と頼む。