時がわたしの
のどの中を通過する
指先を抜けて
泳ぐような細い月も
きちんと空を通過する
わたしは自分を
できうるかぎりまるくする
がらすのように
卵型の
曲線ばかりになろうとする
そしてただ
すべり落ちていくものたちの
時間の城になろうとする
時がわたしの
のどの中を通過する
指先を抜けて
泳ぐような細い月も
きちんと空を通過する
わたしは自分を
できうるかぎりまるくする
がらすのように
卵型の
曲線ばかりになろうとする
そしてただ
すべり落ちていくものたちの
時間の城になろうとする
はるかな旅にも
なれた航海士
手のなかの
時計
ではない
コンパスが
一心に北をさす
かすかなふるえをおさえつつ
あなたのゆく
北の果てに
もしもひとつの
島もありはしなかったら
あなたを船ごとおぼれさせる
おおきなおおきな
あたたかな海が
わたしのなかにあったらいいのに
ある季節には
わたしの世界には隠された王国があった
青い枝先に
白いこうべを垂れるその人は
百合の王だった
その人の背中に
幾重にも合わさった
美しい葉が
無能のつばさのように
ひらかれているのを見た
あれは
夏の終わり
一億の雨が降り止むと
ひとつぶの涙が
定めに抗って
ひとつの霧になろうとしたのです
夜は想う
森のなかへ
帰ってくる魚の群れ
ああ思い出した
わたしはここで咲いてたの
夜は想う
田園へ
帰ってくる花の群れ
ああ思い出した
あれはわたしの恋人の家
夜は想う
空高く照る月のあたり
わたしは思い出せない
もうそれ以上は