昔、キャラバンがあったのよ
月の光に照らされて
駱駝に乗って砂漠をゆくとき
パパの膝から転がり落ちたの
そしてみんなは行ってしまった
わたしを置いて行ってしまった
更紗のような砂の丘に
埋もれた幼いわたしは
蠍の赤い口づけと
蛇の黄色い子守唄で
深い眠りへと誘われる
けれどその時見つけたの、
オパアル色の宮殿が
砂漠の向こうに立っているのを
城は歌うの、小さな声で
大きな声で、くり返しながら
波が砂を洗う音
それが歌のすべての音節
わたしは思った、ここは浜だと
蟹の化石に貝の抜け殻
打ち捨てられて干からびて
青天井を見上げれば
まばゆい星も掛かっている
城の奥には玉座があって
つめたい石の膚に触れると
焼かれた手のひらがつうっと
気持ち良くなるの
わたしには分かった
その玉座と宮殿とそしてこの砂漠のすべてが
わたしのものだということが
それから幾つの年月が
過ぎて行ったことだろう
オパアル色の宮殿で
石の玉座に腰かけて
夜のキャラバンと蠍と蛇を
見守りつづける、わたしの膚も
オパアル色にかがやくの